【SHITAMACHI】谷中「カヤバ珈琲」家とも会社とも違う、安心できる、楽しい場所 | MATCHA - 訪日外国人観光客向けWebマガジン
【SHITAMACHI】谷中「カヤバ珈琲」家とも会社とも違う、安心できる、楽しい場所

【SHITAMACHI】谷中「カヤバ珈琲」家とも会社とも違う、安心できる、楽しい場所

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東京都台東区にある谷中という街。ここには古くから残る歴史的な建物を当時の姿のまま残し、地域の住民の憩いの場となっている「カヤバ珈琲」があります。創業者から店を引き継いだ店長の村上さん(以下、村上)に、「カヤバ珈琲」について、当時の思い出や現在の店のコンセプト、谷中という街についてのお話を伺いました。

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カヤバ珈琲という名前の由来と復活ストーリー

── カヤバ珈琲についてお話していただけますか?

村上 このお店の「カヤバ珈琲」という名前は、榧場伊之助(以下、カヤバ)さんという創業者の名前が由来となっています。昭和13年に創業して、約70年近く営業していました。これだけでもすごいことです。お亡くなりになるまで、ずっと近所の方々の憩いの場所になっていました。

その後、残念ながらお亡くなりになり、店は閉店してシャッターが閉まった状態で3年ほどたちました。常連さんは悲しいし、地域の方々は復活したらいいなという気持ちはあったものの、じゃあ誰がやるか……という状態が続いていたんです。

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台東区には歴史のある建物を残していく活動をしている「たいとう歴史都市研究会」というNPO法人があります。

シャッターの閉まったカヤバ珈琲がだれかの手にわたって駐車場になるのであれば、またお店を引き継ぐ人が現れればお店も復活するし、建物自体も残るということで、彼らNPO法人が中心となって「カヤバ珈琲復活プロジェクト」が始まりました。そこで歴史のある建物を残しながらお店をやっていきたい人を探しているということで、幸い私に声がかかりました。建物の歴史や地域の方々のカヤバ珈琲に対する想いを聞いて協力できたらなと思い、店の復活に尽力することになりました。

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街との交流や建物の保存という視点でお店を経営すること

── 様々な人の想いが詰まったカヤバ珈琲を経営していくやりがいを教えていただけますか?

村上 そうですね。飲食店という仕事は働く人とお客様があっての仕事です。僕自身は“距離感が近いお客様を喜ばしたい”という気持ちがもともとあって飲食業をはじめました。たまたま今回5年ほど前にこの話をいただいて、ただ飲食店をやるだけではなく、街との交流や建物の保存という視点でお店を経営していくというのも、責任が重い分やりがいがありますね。

飲食店を生業にしている人はみんな独立したいという夢があります。そういう意味ではいろいろな制約があったりします。「ここは残してくれ」とか、自由にできない部分もありますが、全部自由というよりもある程度制約がある中で自分たちがやりたいこともできる、というのもやりがいがあります。

やっぱりもともとこの店には常連さんなどの地域のお客様がいたので、そのお客様の期待を裏切らないことも大切です。またカヤバさんがお亡くなりになって話を聞けないこともあったので、昔あったものをそのまま残すということはできないし、時代にも合わないところがあります。だから少しメニューを変えたりしながら、もっともっと良いもの紹介し、提供していきたいと思っています。

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若者とお年寄りが交わる場所へ

じつは昔のカヤバ珈琲に来たことがなくて。そこがすごく残念であり、この話をいただいて来ればよかったなと反省しました。ですがそれは仕方がないとして、昔常連さんだった人の話を聞いて店の復活の参考にしました。

様々な方から当時のカヤバ珈琲の話を聞いてみると、昔はお年寄りしか店に来ていなかったということに気づきました。近くに東京芸術大学があるんですが、是非若い人に来てもらいたかったですし、お寺や古くからある建物を観に観光にいらっしゃる外国人もたくさんいますので、そういった人たちにも歴史的な建物を知ってほしいし、観て、来てもらいたかった。だからいろんな工夫をしました。世代間の交流ができたらいいなと思っています。

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地域の食材や箸にこだわる理由

── カヤバ珈琲の「こだわり」について教えてください。

村上 このお店が復活する頃、自分たち(カヤバ珈琲)だけが盛り上がればいいというよりかは、昔からあるお店やものづくりのお店など、街全体を活性化させたいという想いがありました。谷中の街を巡っていた時に「これは美味しい」を思った食材を使ってみたりとか、お箸は谷中銀座にある「竹細工 翠屋」さんのものを使用しています。

箸にこだわりはなかったんですけれど、このお箸は細くてとても使いやすい。これはいい!と思ってお店で使わせてもらっています。お客様も同じ反応で、「この箸、細くてすごく使いやすい。どこのお箸なんですか?」って聞かれることもあります。「これは谷中銀座にある竹細工 翠屋さんのお箸なんです」って紹介すれば、ぼくらも嬉しいし、お客様にお土産で買ってもらったりしてお互い盛り上がるというか、そういう意味でも積極的に地元のものを使うようにしています。

あとは美味しいお肉屋さんがあるのでそこのハムとか、あんみつ用の寒天とか、ちくわぶなどの練り物、それも谷中銀座のものを積極的に紹介したり、使わせて頂いています。

このような食材や箸のような店の中のもの、メニュー全体のコンセプトまで基本的にはぼくのチョイスです。意識しているのは、味付けは日本人の舌に合うもの。また若人好みの味付けだけではなく、お年寄りの方の口に合うようなもの。外国人の方もたくさんいらっしゃいますので、調整は難しいですけれど、抹茶やあんみつなど、積極的に取り入れています。

牛乳
タカナシ牛乳のスーパーでは売られていないちょっとハイクラスな牛乳をわけて届けてもらっています。牛乳の美味しさを味わうには、カフェラテがおすすめです。

谷中生姜
カヤバ珈琲では谷中生姜を使ったドリンクやスイーツをよく作ります。谷中生姜は葉生姜の一種で、葉生姜とは生姜が育ちはじめて2~3㎝になった時に葉をつけたまま出荷される若い生姜。昔、谷中が特産地だったために谷中生姜と呼ばれているようです。

寒天
みつ豆、あんみつの寒天は、よみせ通り沿いにある蒟蒻などの専門店「山陽食品」さんの手作りです。

ハム
おなじくよみせ通り沿いにある大きなお肉屋さん「コシヅカハム」さんのベリーハムはハムサンドに入っています。

お箸
食材ではありませんが、時々聞かれるお客様がいらっしゃるのでご紹介。谷中銀座入り口の「竹細工 翠屋」さんの竹箸です。繊細な箸先が使いやすく、開店以来ずっと活躍しています。

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珈琲
カヤバ珈琲のコーヒーはHONO ROSTERIA(ホノ・ローステリア)さんのブレンド・焙煎による、カヤバオリジナルブレンドの豆を使用しています。HONOとは珈琲の焙煎に欠かせない炎の名を持ったコーヒーロースター。
カヤバ珈琲で提供するコーヒーは世界のトレンドを参考にしながらも、日本人の口に合うおいしさを追求しています。日本の食文化を世界に発信する意味でも、私たちスタッフが一番おいしいと思う豆や抽出する方法にこだわり、世界中に広めていけたらと思っています。

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家とも会社とも違う、安心できる、楽しい場所

── お店が復活した当時の思い出を聞かせていただけますか?

いまから5年前にリニューアルオープンして今年の9月で5年目になります。オープン当初、お店の立ち上げ自体は初めてだったので、最初は不安でした。当時の常連さんが来てくれましたが「昔のカヤバ珈琲のほうが良かった」というような賛否両論があったんですけれど、こういう外観もそのまま残り、昔から使っている椅子などの思い出の一部が残っているので、頑張ってくださいって言って応援してくださる方が増えてよかったと思っています。

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創業当時から使用している椅子

いまでは近所の方や常連さんがたくさんいらっしゃいます。特に平日の午前中は時間がゆっくりしていて、ぼく自身もその時間が一番好きです。

街自体が高齢化しているので、近所の話とか、「あそこに〇〇ができるわよ」というようなお喋りをしています。ぼくも楽しいし、お客様も話す場所がある。家とも会社とも違う、安心できる、楽しい場所になっていると思います。

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谷中では日本の文化と触れ合える

── 谷中という街の良さについて、どう思われますか?

村上 ぼくは古い日本の建物、畳の部屋に住んだことがこれまでありませんでした。畳の匂いとか、そういうのを感じられるのは日本人でよかったなと。昔の建築など、日本ならではの文化がいつも近くにあって触れ合うことができる。そうすると、なんだか落ち着きますよね。このような日本の良さを知ってもらいたいと思います。

若い人たちがカヤバ珈琲に来ると、「お婆ちゃんの家に来たみたい」とよく言われます。そのうえ日本ならではのものに触れ合う機会も少なくなってきているので、若い人には日本の文化を感じられる場所としても、地域の人たちと対話できる場所としても、来ていただけたらいいなと思っています。

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ちなみに2階には畳の座敷があります。外国人の方はワオ!と驚きながらも、あんみつを食べて楽しんでいってもらえます。あるフランス人の写真を撮っている方で、フランスから来た観光客を案内するお仕事をされている方は、週に2~3回、毎回違うお客様を連れて来てくれます。2階でカヤバ珈琲のことや日本の建築物についてなど、いろいろ説明してくれているようです。お客様は喜んでくれるし、そういうのは嬉しいですね。

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── カヤバ珈琲が谷中に訪れる人にとっての「旅の入り口」になっているということですね。

村上 そうですね。あとはミシュランといえばグルメガイド本ですが、トラベル版もあります。英語版とフランス語版があって、京都が星3つなんですけれど、「谷中」というエリアが星2つを獲っていて、だから外国人の方はよく谷中に来るんですね。

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モーニングセット(野菜サンド+珈琲) 700円

── 谷中は注目されているということでしょうか?

村上 注目はされていますが、なにか新しいものができたというよりも、昔から続いているものに対してスポットが当たっているかな?という感じです。若干街が若返りしているところもありますが、大きく変わっているわけではありません。

メディアで特集されたりするともてはやされて一時的にブームにはなるんですが、それにあやかろうかなという気持ちはなくて、昔から続く良いものを大事にしながら、紹介してもらえればなと思っています。ありのままを映していただければなと(笑)。

幸いにもお店はたくさんありますけど、大手チェーンとかは入っていませんし、なにかやりたい、伝えたいという人が店を構えたりするので、そういう店や人が集まっていると楽しいですね。いろんな人のこだわりが垣間見えて。

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ルシアン(500円)とたまごサンド(400円)。当時のカヤバ珈琲のメニューを再現したもの

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村上 日本は観光資源はたくさんあると思うんですけど、いまいち観光大国になれていません。もっともっと日本のいいところを発信していきたいですよね。

いままでそういうことができていないのは、きっと言語の問題だったり、日本人の性格というか、あんまりコミュニケーションを得意じゃないというか。逆に自分たちで試行錯誤しながら良いものを創りあげていくっていう意味では素晴らしい気質というか性格ですよね。これから人口も減っていきますし、うまく日本がやっていくためには、もっと外国人にうまく“伝えること”で、日本に来てもらうというのが大切だと思うんですね。だからこういう古くからある建物や食文化を大事にしながら、ここのお店をやっていきたいと思っています。

Information


最寄り駅:JR山手線日暮里駅南口から徒歩5分
住所:東京都台東区谷中6-1-29
電話:03-3823-3545
営業時間:月~土 8:00-23:00
:日   8:00-18:00
定休日:なし(年中無休)
公式HP:http://kayaba-coffee.com/info.html

著者

Takuro Komatsuzaki
茨城在住。『MATCHA』の編集をしています。

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