書道で頻出する「月」。その一文字に託された想いとは | MATCHA - 訪日外国人観光客向けWebマガジン
書道で頻出する「月」。その一文字に託された想いとは

書道で頻出する「月」。その一文字に託された想いとは

2014/06/25 KosugiUkyo

帰り道、ふと空を見上げるとそこには空に浮かぶ美しい月。

感動を伝えようと、あなたはズボンのポケットからスマホを取り出しTwitterで呟こうとして、携帯の電池が残り2%だと気づきます。急いで入力するも「今夜は月がk」まで書いたところで画面は真っ暗になってしまいました。あきらめてぼんやりと月を眺めながら歩き出します。

そして、なんとなく遠い昔に思いを馳せます、ケータイがなかった時代の人もこうして月を眺めていたのだろう、と。しかし、Twitterなどがなかった時代に、私たち日本人はいったいどうやってこの感動を表現していたのでしょうか。

Twitterより先に「つぶやき」を体現した和歌

書道で頻出する「月」。その一文字に託された想いとは

かつての日本人が、ふと思いついた気持ちをしたためたのはTwitterではなく「和歌」。

Twitterで投稿できるツイートは140字ですが、驚くべきことに和歌はわずか31字(5・7・5・7・7字の言葉の組み合わせ)です。なんと日本では1,000年以上も前から、和歌という、感じたことを極めて凝縮された言葉で表現する手段を確立していたのです。そして、その和歌は、例外なく「書道」によって書き残されてきました。

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書道で頻出する「月」。その一文字に託された想いとは

政治や恋愛などあらゆる場面で活躍した「和歌」が、その後の日本文学や書道芸術の大きな発展に寄与してきたことは言うまでもありません。

掛詞や枕詞、序詞、縁語などさまざまな言語表現を生み出し、また「古今和歌集」(日本最初の勅撰和歌集)をどれだけ暗記しているかによって教養が問われる時代だったのです。

和歌や書において好まれた「月」

書道で頻出する「月」。その一文字に託された想いとは

書道において「月」という字が好んで書かれることには、いくつかの理由があると考えられます。

まず、その意味と形の簡潔性です。小学一年生で習うこの漢字は、画数もたったの4画。しかも「月」は夜に空を見上げればそこにありますから、意味もとても分かりやすいです。

また、その文学的奥深さというのも「月」が好まれる理由の一つでしょう。新月から満月まで、まるで人の感情の機微を表しているかのような微妙な満ち欠け。さらに、辺りが真っ暗な夜にしかその姿を見ることができないという状況にも、ロマンを感じずにはいられません。

書道で頻出する「月」。その一文字に託された想いとは
Wikimedia commonsより

ちなみに、「百人一首」は日本で一番有名なかるたで、100人の歌人が1首ずつ詠んだものを集めたものですが、この百人一首の和歌の内なんと12首が「月」に関する歌なのです。

「月」という漢字の成り立ちはいたってシンプルです。欠けた三日月のような月がもとになっています。

月にかこつけて伝える想い

書道で頻出する「月」。その一文字に託された想いとは

「月」という言葉についてのとても日本的なエピソードがあります。

日本を代表する文学者、夏目漱石が大学で英語の教師をしていたころ、授業で生徒にこう尋ねました。「I love you.を和訳しなさい」と。

すると、ある生徒が「我、汝を愛す」と答えます。しかし、夏目漱石はその答えに満足せずに、その訳は日本的ではないと生徒に言います。

「今夜は月が綺麗ですね、と訳しなさい。日本人ならこれで事足りる」。

どういうことか、皆さんおわかりでしょうか。

「今夜“あなたと一緒に観る”月は綺麗ですね」ということです。つまり、あなたと一緒にいると、いつも観ている月がこんなにも綺麗に観えてしまう(くらいあなたが好きです)ということなのです。

このエピソードが本当かどうかは夏目漱石本人と、その生徒にしかわからないことですが、いずれにしても、「月」というものが恋愛感情を伴う和歌に多く読まれていることは事実なのです。

そういえば、「すき(好き)」と「つき(月)」って発音も一緒なのですね。

書道で頻出する「月」。その一文字に託された想いとは

いつもメールでばかり気持ちを「送信」しているそこのあなた。たまには、一緒に月を眺めながら言ってみてはいかがでしょうか。

「今夜は月がk…」

著者

KosugiUkyo
文化の表現者であるべく、「思い」を表現する書を目指して書家をしています。クールな書を書き上げるとともに、デザイナーとしてパリコレへの参加を目指しています。

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