【雨の日】浮世絵から読み取る、先人達の雨への思い | MATCHA - 訪日外国人観光客向けWebマガジン
【雨の日】浮世絵から読み取る、先人達の雨への思い

【雨の日】浮世絵から読み取る、先人達の雨への思い

諸外国の雨が一気に降る雨期とは違い、しとしとと雨が降り続く日本の梅雨。

日本が世界に誇る浮世絵にも、雨を描写した作品は数多くありました。
今回はその「雨」にまつわる作品を通して、先人達の技術、そして雨に対する心情に焦点を当ててみたいと思います。

四季のある日本が生み出した雨の描写と世界に広まったジャポニズム

現代でも世界的に評価され、画家の思いが受け継がれている西洋の作品は数多くあります。しかし、雨を描写した西洋の作品はほとんど見られませんでした。

これは四季の色が豊かであり、作物を育てるために水が多く必要だった日本の気候とも、深く関係があるといえます。西洋では、雨と聞くと「悲しい」などの悲観的なイメージを思い浮かべていたという理由から、風景画として描かれなかったのかもしれません。しかし、日本では雨は生活に欠かせない自然の恩恵だったことから、「雨」への感謝を絵師たちは作品に込めました。

  • 歌川広重 – 名所江戸百景 大はしあたけの夕立
  • 【雨の日】浮世絵から読み取る、先人達の雨への思い
    Wikimedia Commonsより

  • 歌川広重 – 東海道五十三次之内 庄野 白雨
  • 【雨の日】浮世絵から読み取る、先人達の雨への思い
    Wikimedia Commonsより

    雨を描写した作品といえば、代表的なのは歌川広重(※1)の作品です。雨に関する作品を多く世に残したため、雨の詩人ともいわれています。

    西洋では雨の描写はこれまでほどんどなかったこともあり、歌川広重の描いた細かい雨の描写方法は、まさに美術界の革命。他にも、大胆な構図、遠近法は西洋の画家たちに大きな影響を与え、のちに西洋の印象派画家達の間で広がったジャポニズムの流行を生み出すきっかけともなりました。また、「ヒロシゲブルー」と呼ばれている青色や藍色の出し方も、西洋で高く評価されました。あの有名なゴッホも、歌川広重の技術とセンスに感銘を受け、「大はしあたけの夕立」をはじめとしたいくつかの作品を模写したことも有名です。

  • 葛飾北斎 – すほうの国きんたいばし
  • 【雨の日】浮世絵から読み取る、先人達の雨への思いWikimedia Commonsより

  • 葛飾北斎 – 紫陽花に燕
  • 【雨の日】浮世絵から読み取る、先人達の雨への思い
    Wikimedia Commonsより

    あの有名な葛飾北斎(※2)も雨を描写した作品を数多く残しており、梅雨の時期に輝きを増す紫陽花の花も、彼によって描かれました。紫陽花の花が昔から人々に愛されていたことがわかりますね。

  • 鈴木春信 – 雨中の夜詣で
  • 【雨の日】浮世絵から読み取る、先人達の雨への思い

    Wikimedia Commonsより

    また、美人画を得意とした鈴木春信(※3)や鳥居清長(※4)も、雨の中の女性を描写した作品を描いています。
    彼の作品からは、昔の女性達がどのように雨の日を過ごしていたのかが読み取れます。提灯が雨風になびいて困っている女性や、着物の裾をまくりながら行き来する女性達の姿は、どれも現代では見られないものですよね。

    (※1)歌川広重(安藤広重):1797-1858年を生きた浮世絵師。
    (※2)葛飾北斎:1760-1849年を生きた浮世絵師。
    (※3)鈴木春信:1725-1770を生きた浮世絵師。錦絵の創始者でもある。
    (※4)鳥居清長:1752-1815年を生きた浮世絵師。鳥居派の代表的な絵師。

    浮世絵から読み取る、先人達の雨への思いとは

    現代の私たちは、雨と言ったら生活する上で不便なこともあり、何だか憂鬱な気分になりがちです。

    しかし先人達はどうでしょうか。昔の人たちは、雨が降ることをそこまで嫌っていなかったように思えます。いや、嫌うどころかむしろ、感謝の気持ちが多かったかもしれません。ご存知の通り、作物を育てるためにも、水が多く必要だった日本の気候から考えてもそうだったといえるでしょう。これは現代にも共通していることではありますが、昔の生活で特に「雨」というものは、生きていくことそのものに関わっていた。そういった理由から、雨が降ることに感謝をし、自然と寄り添いながら生きていたのではないでしょうか。

    そして、その思いは絵に限らず、短歌や民謡にも込められ、現代まで伝わってきました。先人達が雨に感謝していたことも、雨を題材にした作品や、日本語に雨を表す言葉の多さから読み取ることができます。現代では忘れがちな雨がくれる自然の恩恵、そんなことを思い出させてくれる先人達の作品からは、色々なことを気づかされますよね。

    五月雨に想いを重ねて。雨を詠った和歌に見る、日本人の心情とは

    最後に

    雨だと憂鬱な気分に陥りがちだけども、こういった自然と寄り添って生きる先人達の心情が込められた作品を通して、自然の恩恵を再確認するのも、梅雨を楽しく乗り切る方法の一つではないでしょうか。

    著者

    Haruka Kobayashi
    現在、韓国留学中。栃木県宇都宮出身、千葉育ち。外国への憧れから日本をでたものの、いざ出てみると日本の素晴らしさに気づく。主にMATCHA韓国語版でお手伝いさせていただいてます。

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